第79回 日本創造学会アワード受賞者講演会(2023年5月14日(日))

  • 主催 学術研究団体 日本創造学会
  • 開催日 2023年5月14日(日)
  • 時間帯 13:00-16:15(予定)
  • 開催方法 オンライン(Zoom)
  • 参加費 無料
  • 申込締切 2023年5月13日(土)

【スケジュール】
13:00-13:05 開場 ご挨拶 豊田貞光理事長
13:05-13:25 論文賞講演1 尾澤知典氏
13:25-13:50 論文賞講演2 由田徹氏
13:50-14:10 発表賞講演1 森田純恵氏
14:10-14:30 発表賞講演2 西浦和樹氏
14:30-14:50 発表学生賞講演1 井原颯太氏
14:50-15:10 発表学生賞講演2 東海林慶祐氏
15:10-15:30 発表学生賞講演3 七條花恋氏
15:30-15:50 デジポス賞講演1 宮外真理子氏
15:50-16:10 デジポス賞講演2 馬場康之氏
終わりの言葉

論文賞講演1 尾澤知典氏

「小学生における日常の教科学習を活かした創造性教育の教材開発と実践」


講師:尾澤知典氏

講演概要
小学校において、創造性教育は日常の教科学習とは別のものとして捉えられおり、決して盛んに行われているわけではありません。 特に、アイディア発想を促すための指導法は確立されていません。 しかし、IB(国際バカロレア)での学習のように既存の知識技能を転移させる試みをヒントとして、 抽象概念が新しい発想を促す手がかりになると考えました。本研究では10-12歳の児童が情報を抽象化・具体化する練習用教材であるポンプチャートを開発しました。 実践の結果、ポンプチャートを使用すると児童はアイディアの質(流暢性・柔軟性・独自性)の向上を実感し、 今後の練習場面においても「概念」を使用する志向性の向上が確認できました。

【自己紹介】
横浜市小学校教員 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員
東京学芸大学教育学部卒 横浜国立大学教育学研究科修了(教職修士 専門職)  慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(システムズエンジニアリング学)  北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 博士後期課程修了(知識科学博士)2022年日本創造学会論文章受賞  兵庫教育大学附属小学校運営指導委員(2017-2018年度)よこはまアイディアチャレンジ(ビジネスコンテスト)への児童参加に向けたPBL内容設計と実施

論文賞講演2 由田徹氏

「画像の自由選択によるユーザ感性要求の構造化に関する研究-建築デザインの事例研究-」


講師:由田徹氏

講演概要
建築デザインを事例として、デザインプロセスの初期において、暗黙知となり潜在化しやすいユーザ感性要求に着目し、 ユーザ感性要求を構造化して把握するひとつの方法を提案することを目的としている。提案する方法を用いることで、 建築デザインのデザインプロセスが効率化されるだけでなく、建築デザインと広くデザイン活動に寄与し、 建築学やデザイン学のみならず、知識科学の研究活動の議論を深めるこという意義がある。
本方法の提案にあたっては、ユーザ感性要求の探索について先行研究の議論を通して考察し、一般的なデザインプロセスモデルにおいて、 ユーザ感性要求がどの様に探索されているか、また、デザインの初期プロセスで利用の出る方法がどの様なものであるべきかの検討を行った上で提案を行った。

自己紹介
1965年石川県能美市生まれ
石川工業高等専門学校、豊橋技術科学大学と同大学院で、 建築学、都市工学、景観工学を学ぶ。
終了後、建築家の北川原温を師事し上京、 建築デザインと建築設計監理の実務に従事する。東京で独立後、 故郷の能美市に活動の拠点を移す。 現在は株式会社ユウプラス代表取締役。建築家、デザイナー。
デザイン分野は、建築、プロダクト、グラフィックの他、コミュニティデザインなど多岐の分野でデザイン活動を展開している。 2023年12月北陸先端科学技術大学院大学にて博士号取得、 知識科学博士、 日本創造学会、日本デザイン学会、日本建築学会として研究活動を行っている。

発表賞講演1 森田純恵氏

「地方創生に向けたイノベーションプロセスの提案と適用~オランダ農業ビジネス国にみる農業と情報工学の融合からの質的研究~」


講師:森田純恵氏

講演概要
本研究の主旨は、オランダ農業の成功要因を分析し、農業と情報工学の融合のあり方を考察、日本の地方創生に適用することである。 最初にオランダが環境制御技術に圧倒的に強く、農業ビジネス国として世界2位という位置を維持できる要因を抽出する。 調査方法は、オランダの環境制御装置メーカーへのインタビューと、日本各地の地方創生事例分析とする。 オランダの成功要因はシステムデザイン・マネジメントにあり、 一方日本の成功事例は関係人口の構築とダイナモ人材(=目的志向の知識創造に従事する人)の存在にある。 そこで日本の地方創生事例をダイナモ人モデルで抽象化し、日本の地方創生に向けたイノベーションプロセス提案する。

自己紹介
秋田県立大学 システム科学技術学部 情報工学科・教授
1983年東京理科大学理学部数学科卒業、2020年同大学院経営学研究科技術経営専攻卒業、多摩大学大学院経営情報学研究科博士課程後期在学中。 富士通(株)にて一貫して海外をベースにネットワーク分野の製品の研究開発に従事。グローバルな視点によるデジタル経営を経て、2022年4月より現職へ。 秋田県の地方創生を目的としてデジタル駆動により「埋もれた資源」を発掘できる仕掛けを検討中。世代にまたがる多様性と包括(D&I)が重要。

発表賞講演2 西浦和樹氏

「命の尊さを学ぶ防災教育プログラム開発に関する研究-災害発生時の発想(ひらめき)と解決策(避難行動)を促す効果的な研修プログラムとは?」


講師:西浦和樹氏

講演概要
災害発生時の保育者は、「想定外」の事態でも「命を守る」という課題への発想(ひらめき)と解決策(避難行動)が求められる。 本研究では、被災地研修によって参加学生44名の教育効果について検討を行い、「災害発生時に必要となる行動」について、 研修後の知識量が有意に増加し(t(12)=4.57, p<.001)、知識のネットワークも「災害」「行動」「必要」「考える」ことを学習できる研修プログラムになっていた。 このことから、本研修プログラムは、質的・量的側面から裏付けられた教育効果の高い防災教育プログラムであった。

自己紹介
宮城学院女子大学 教育学部教育学科 教授 博士(心理学)。
専門分野は、教育心理学/健康心理学。2011年から2012年にかけて、スウェーデンのリンショーピング大学に客員教授として滞在。 北欧の教育研修とコンサルティング事業を行っている。主な著書に『みんなの教育 スウェーデンの「人を育てる」国家戦略』(共著、ミツイパブリッシング )、 『脳と学習-未来の学校に必要な知識』(編訳、電子書籍)など。

発表学生賞講演1

「HMDを用いたVR空間での創造会議の評価」


井原颯太氏

講演概要
映像と音声を用いた遠隔地どうしのコミュニケーション(Zoomなど)は、主に視野に起因する問題から発散的思考(多種多様なアイデアを考え出す思考)を 阻害することがわかっている。そこで、本研究では、発散的思考が発揮できない問題の解決策として、 VRながらもほぼ実世界と同様の視野が得られるヘッドマウントディスプレイ(HMD)を創造会議に利用する手法を提案している。 結果、対面会議と比較するとWeb会議(Zoomを用いた会議)では、先行研究と同様、発散的思考が阻害されることが分かった。 一方、HMDを用いたVRの会議では、対面会議と同等で、かつWeb会議以上の発散的思考を発揮する可能性が示唆された。

自己紹介
久留米大学 文学部 情報社会学科 川路ゼミ 4年
大学では、情報社会学を専攻しており、社会調査や統計、創造技法など、課題を発見・分析する方法と、 プログラミングやOfficeなどのパソコンスキルを学んでいます。 学外の活動としては、現在、主に自治体向けのクラウドサービスを提供している会社で、アルバイトとして、 自治体のDXを推進するチームに所属しています。チームでは主にシステムのテストや仕様書の更新、実証実験の準備などを担当しています。趣味は映画鑑賞です。

発表学生賞講演2

「隠れマルコフモデルを用いた創造的心理状態の推定および「響きあい」の検出」


東海林慶祐氏

講演概要
共創的協働に際し、個人間で共有された心象が形成され、他者と創造的心理状態が共鳴する「響きあい」の重要性は定性的に認識されているが 定量的把握に乏しい。そこで本研究ではマルチモーダルな生理指標から隠れマルコフモデル(HMM)を用いて共創的ペアワーク時の創造的心理状態を推定する。 加えて共創時特有の現象を含む同モデルで個人ワーク時の創造的心理状態を推定し、個人の創造性と「響きあい」の関係を考察した。 その結果、HMMで共創時創造的心理状態が推定しうること、加えて、個人での心象形成に際し発現した「自己共鳴(心に響く時間)」も HMMにより同様に共鳴が検出され、個人レベルの認知では他者との「響きあい」と同質と示唆された。

自己紹介
九州大学芸術工学府松前研究室所属の東海林慶祐と申します。 この度は、このような貴重な機会をいただきましてありがとうございます。大学でデザイン対象の領域を限定せず、幅広くデザインについて学び、 実践する中で、特に複数人でのデザインプロセスで経験する「響きあい」に興味を持ち研究を進めてまいりました。 研究者としては駆け出しの身ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

発表学生賞講演3

「共創ワーク中の音声コミュニケーションと「響きあい」発現との関係」


七條花恋氏

講演概要
「響きあい」発現と音声コミュニケーションの関係を、言語的要素(発話機能) ②-1近言語的要素(沈黙) ②-2近言語的要素(発話の偏り)の観点から分析した。 その結果、「響きあい」発現時は相手発言に対し「好意的な反応」が非発現時より多く、両者の発話バランスは主に一方が話し他方も発話で反応する傾向が高かった。 さらに共創ワーク推移を拡張局面と深耕局面に分けて分析すると、「響きあい」非発現時の拡張局面では「停滞」と「発案」が大半で会話が不規則なのに対し、 「響きあい」発現時の拡張局面では「停滞」せず「質問/対立意見」「躊躇/真剣」「好意的な反応」等の相互間コミュニケーションが多く観測された。

自己紹介
九州大学大学院芸術工学府芸術工学専攻人間生活デザインコース所属。1999年生まれ。
福岡県立明善高等学校卒、九州大学芸術工学部工業設計学科卒、現在上記コース2年生。共創、コミュニケーション、創造性、データ分析に興味があり、 現在は共創時の「響きあい」(主体間で共通の心象を形成し、相互に創造の喜びや興奮といった「心に響く」感覚を刺激・共鳴しあう状態)と 音声コミュニケーションの定量的な分析を行なっている。

デジタルポスター発表賞 講演1

「子育て世帯の地方関係人口を増やす「保育園留学®」システムの提案」


宮外真理子氏

講演概要
保育園留学®システムは、子育て世帯が地方関係人口を増やすための提案です。地方自治体の少子高齢化問題に対応するため、 観光を通じた関係人口創出を促進することが目的です。保育園留学®では、子どもを保育園に預け、親はテレワークをしながら地方の町で過ごすことができます。 新しい場所で地域の人と交流し、関係人口となることで、新しいアイディアやイノベーションを生み出すことが期待されます。 参加した親子・参加したい親子、運営会社、対象の地域の保育園、行政、街づくり関係者、宿、ワーケーション運営のスタッフ等の相互作用で 地方創生に貢献できる仕組みを創ります。

自己紹介
大阪府箕面市出身。大阪外国語大学で中欧地域文化専攻(ドイツ語科)を学び、その後、慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント学科を修了、 現在は大阪公立大学都市経営研究科で保育園留学®について研究しています。仕事は有限会社フォントで翻訳通訳業務や ハイエンド外国人向けのインバウンドアクティビティ企画をしています。家族は、5歳、3歳、1歳の子どもたちがいます。 趣味は旅行やスポーツ観戦(ガンバ大阪)です。

デジタルポスター発表賞 講演2

「2019~2022年のインプロ(即興劇)研究の経過報告(リアル~Web会議システム~メタバース)」


馬場康之氏

講演概要
インプロとは「即興」という意味の英語“improvisation”を訳した言葉で台本のない即興演劇に由来する「即興表現プログラム」のことです。 インプロは「クリエイティビティ機能」、「即興力強化機能」、「コミュニケーション機能」、「チームビルディング機能」等ビジネスに関連する機能が リアルのワークショップで検証されています。今回それぞれのバーチャル空間で実際にワークショップを開催し、 終了後検証されている機能がWeb会議システムやメタバースなどのバーチャル空間でも転用が可能なのか、アンケート調査による検証を行いました。 当日は時間が許せば実際にメタバース空間に入り、ワークの一部を体験いただきながら解説させていただきます。

自己紹介
株式会社毎日放送勤務。早稲田大学教育学部社会科学専修卒、関西学院大学経営戦略研究科修了、経営管理修士(専門職)。 その後、日本創造学会に所属し、シナリオやインプロ等のアート思考を用いたイノベーション創出等のビジネス分野への応用やワークライフデザインの研究を行う。 メタバースは昨年5月より始め、現在メタバース経済圏の可能性をSpatial.io上で実験するSUSHI DAO( https://spatian-town.com/ )に参加中。

申込み方法

※オンライン(Zoom)にて開催します。
申込み方法1
※参加希望の方は参加者注意事項をご確認の上、メール(jcs-info@japancreativity.jp)でお申し込み下さい。その際、[  ]内についてお知らせ下さい。
[氏名/所属/会員 or 非会員/URL送付先メールアドレス]
お申し込みの方に、メールで参加URL(Zoom招待状)をお送り致します。

申込み方法2
イベントポータルサイトpeatixから申し込みができます。
https://jcs-cresalo79th.peatix.com/
【参加者注意事項】
○Zoomの表示名は氏名/所属がわかるように設定してください。
○当サロンは、学会会則に基づき学術や実務に貢献するためのサロンです。 参加者はお互いの立場、専門性を理解の上、誠意をもってご発言下さい。
○知的財産権の侵害になる恐れがありますので参加の際の録画はご遠慮下さい。
○時間スケジュールは進行の状況により変わる可能性もあります。
○システムの都合や通信状況により、十分なサービスを受けられない可能性があることをご承知おき下さい。