日本創造学会 第43回研究大会

2021年10月2日(土)~10月3日(日)オンライン開催

基調講演:10月2日(土)13:10~14:10

「長寿企業に学ぶポストコロナの経営」

後藤俊夫氏(日本経済大学大学院 特任教授/一般社団法人100年経営研究機構 代表理事)

【講演者プロフィール】
1942年生まれ。東京大学経済学部卒。大学卒業後NEC 入社し、 1974年ハーバード大学ビジネススクールにてMBA取得。 1997年から1999年まで(財) 国民経済研究協会・常務理事(兼)企業環境研究センター所長。 1999年静岡産業大学国際情報学部教授、2005年光産業創成大学院大学統合エンジニアリング分野教授を経て、 2011年より日本経済大学渋谷キャンパス教授に就任し、同経営学部長を経て、2016年4月から現職。 経営戦略(企業の持続的成長)を専門分野とし、日本における長寿企業、ファミリービジネス研究の第一人者。 国内外の大学における教育活動及び大手企業など各方面での講演・セミナーを精力的にこなしている。

【講演概要】
民間企業で33年間勤めた後、1999年の大学転職以来20年余、長寿経営を一貫した研究テーマとしてきた。 長寿企業の絶対数について、日本の52,328社を筆頭として、世界136ヵ国・地域の分布状況を確認した後、 各国経済規模に比した相対値では、1位日本に続き、2位をドイツ文化圏が占めると判明し、 研究の焦点は長寿経営の要因と共に国際比較に移りつつある。
今回のCOVID-19パンデミックに関して、 長寿経営から見える要点は次の3点である。第1に、典型的な長寿企業は今回のリスクを未曾有とは認識していない。 大規模の自然災害や社会経済的危機の定期的発生を彼らは経験知として察知し、日頃の手堅い経営で蓄積した 手元流動性で備えている。
第2に、大規模危機への対応は地域共存が効果的と教訓が伝わり、1995年関西淡路大震災、 2011年東日本大震災と同様、今回もコミュニティを基盤とした早期レジリエンスが特徴的である。
第3に、ポストコロナ時代の経営は長寿企業にある。長寿企業は「三方良し」の理念、並びに従業員、 顧客、地域社会、そして地球の限られた資源を大切にしてきたからこそ、長期継続してきた。
世界中が同時に危機的状況を経験したことで、経済的な営みの本質に対する反省、社会木活動への 哲学的考察が進むのではないか。株主を第一に考える米国流の「株主資本主義」も揺らぎ、多くの企 業が明日の経営の姿について悩む中、長寿経営の意義を学ぶ重要性が従来以上に増すと思われる。